平和公園アクアタワーについて
平和公園の北の位置に一際目を引くレンガ色の建物があります。 先日、ある人から「子供を連れて展望台へ行って来ましたが、お墓ばかりが目に付きました。 どうしてあそこに展望台を造ったのでしょうか?」という質問を受けました。 水道施設の大半は地下に埋設された配水管で、地上で目にすることができる施設は浄水場や配水塔など限られています。
アクアタワー遠望
この建物も地上に建設された数少ない水道施設の一つで、星ヶ丘配水場の代替施設として建設された平和公園配水場(千種区平和公園一丁目地内)です。
塔の愛称は「平和公園アクアタワー」と呼ばれています。アクアはイタリア語で水を意味しています。
元々、星ヶ丘配水場(千種区星ヶ丘一丁目3番地)は昭和32年に住宅公団(現・都市再生機構)によって住宅団地に供給する施設として建設されました。
その後、水道局(現・上下水道局)が移管をうけたもので、千種区、昭和区、名東区、天白区の高台に配水する拠点としての役割を持っていました。
しかし、平成8年に星ヶ丘配水場の老朽化対策と停電時の配水圧低下を解消するため施設の改良に取り組むことになりました。
アクアタワー
コンサルタントに委託して航空写真を撮るなど適地を探すとともに配水池や配水塔の計画高、容量等いろいろな面から検討されました。
最終的には、星ヶ丘配水場をその場所で更新する案と配水区域の中で地盤が高く、流入・流出管の布設にも有利な平和公園に新設する案に絞られました。
新設案では用地については借用することが前提になっていました。
現地で更新した場合は、用地面積が狭く配水池(2100m3)を始め、施設の規模が小さいことから、今後の水需要に十分に対応することが困難であることや、ポンプ圧送方式による配水のため停電時には断水や水圧不足による水流の変化によって濁水の発生が心配されました。
猫ヶ洞池とアクアタワー
一方、新設案では用地の確保についての問題はありましたが、地下に貯水容量5000m3の配水池とあわせて、地上に貯水容量600m3の配水塔を建設する計画でした。この計画では十分な貯水量を確保し、安定した供給ができ、停電時においても地上の配水塔から供給することができますので、水圧不足や濁水の発生の心配はありませんでした。また、建設費の比較においては、どちらの案でも大差のない試算結果になっていましたので、新設する方向で進むことになりました。
最大の課題である用地の問題については、公園管理者である農政緑地局(現・緑政土木局)や関係各局と協議をかさねました。その結果、阪神・淡路大震災を踏まえ配水塔や配水施設はライフラインとして必要な施設であるとして公園内に設置することに理解が得られました。しかし、平和公園の中に地上の構造物を建設するには都市公園法の制限あったため、将来、公園の中に展望台を造ってほしいという地元要望を考慮して、配水塔は展望施設が一体となった施設として建設することになりました。展望施設の他に配水池の上部をこども公園として開放し、市民の皆様に安らぎと憩いの場を提供することになりました。また、車椅子で展望台へ移動できるようスロープやエレベータが設置されています。配水塔のデザインについては、当初の計画では円形の展望台で宇宙船のような形になっていましたが、平和公園内に建設する施設であることや公園管理者や都市景観室の助言に基づいて、合掌や蓮の花をイメージした現在のデザインとなりました。
一方、当時、地震対策として断水時の応急給水の拠点となる応急給水センターを市内の四方面に整備する計画が進められていました。そして、東部方面の応急給水の拠点はこの平和公園配水場に設置されることになりました。応急給水センターには常設給水栓、給水車用給水栓、災害用機材倉庫などが設けられています。さらに、防災の面では広域防災拠点と広域避難場所の両方に指定され応援隊の活動や緊急物資集積の拠点、避難場所としての役割を担っています。
展望室
工事は平成9年度から始まり、平成13年6月に主要工事は完成しましたので、丁度20世紀の終わりから21世紀の初めにかけて建設されたことになります。平成14年2月19日から運用を開始していますが、平成14年6月7日には200名の人が参加して盛大に開場式が行われました。
展望台の高さは40mですが、地盤が高いことから海抜の高さでみますと120mありますので、テレビ塔の112mより高くなっています。展望室からは平和公園の全景だけではなく、鍋屋上野浄水場、東山給水塔、鳴海配水場、猪高配水場などの水道施設や遠くは名港トリトンも眺望することができます。
展望室からの眺望(南西方面)
アクアタワーは現在、土・日曜日、祝日に開館されています。平和公園の中にはコアラのエサになるユーカリの森がありますし、一万歩コースも設けられています。散策やウォーキングを兼ねて是非一度訪れてみて下さい。
中野道孝
石川美直