鍋屋上野浄水場の太陽光発電

 名古屋市上下水道局では環境に配慮した事業運営を推進しており、平成23年に策定した「水プラン27」においても温室効果ガスの排出削減対策の一つとして、浄水場等の広い敷地を活用した「太陽光発電の導入」をあげています。

急速ろ過池
急速ろ過池のソーラーパネル

 平成22年9月に鍋屋上野浄水場の急速ろ過池の覆蓋と設備棟の屋根に太陽光発電装置が設置され、平成9年に稼働した設備と合わせるとその出力は261kWで、設置時点で、1事業所では市内最大規模となりました。
 想定年間発電量288,800kWhは一般家庭の約80世帯分で、鍋屋上野浄水場での電気使用量の約3%を賄う量です。
 なお、既設分は環境保全局と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が共同で「鍋屋上野浄水場太陽光発電フィールドテスト事業」として実施したものであり、4年間の実証運転の後、上下水道局に移管されました。
 設置費用は今回新設分が191kWで約1億4千万円(うち、国の補助金約6,600万円)、既設分が70kWで約1億1千万円です。
 出力1kW当りの設置費用は新設で約73万円、既設で約157万円、となっており、規模の違いはありますが13年間でおよそ半分になってきています。

設備棟屋根のソーラーパネル
設備棟""

 上下水道局ではこれ以前にも太陽光発電の採用に意欲的に取り組んできており、平成13年から2カ年で下水処理施設の覆蓋と一体化したソーラーパネルの開発を民間企業と共同でおこないました。しかし残念ながらコスト等の関係で実用化には至りませんでした。
  福島原発事故以後、自然エネルギーに関心が高まり太陽光発電が注目されていますが、その発電コストは資源エネルギー庁によると1kWh当り49円でLNG火力発電(6~7円)石炭火力発電(5~6.5円)原子力発電(5~6円)に比べかなり高い状況です。(下記試算表参照)
 このため、さらなる普及にはコスト削減の技術革新が必要です。

各電源の発電単価試算
電源 発電単価(円/kWh) 設備利用率(%)
水力 8.2~13.3 45
石油 10.0~17.3 30~80
LNG 5.8~7.1 60~80
石炭 5.0~6.5 70~80
原子力 4.8~6.2 70~85
太陽光 49 12
風力 9~14 20

水力~原子力については「資源総合エネルギー調査会電気事業分科会第9回コスト等小委員会」(電事連試算)(2004年1月) 太陽光、風力については「資源総合エネルギー調査会新エネルギー部会中間報告」(2009年8月)
出所:資源エネルギー庁「日本のエネルギー2010」

 太陽光発電の課題はコストと日照に左右されることです。
 鍋屋上野浄水場の事例においても設備の設置場所の制約から発電効率の低下を余儀なくされております。
 名古屋市は北緯35度に位置し、設置は南向きで地平に対し35度の角度が最も発電効率が高いのですが、新設分は屋根等の向きの関係で東向きと西向きに設置されており、効率が15%低い想定になっています。
 また、既設分は南向きですが周辺住宅への光反射を避けて設置角度を20度にしてあり3.4%効率が悪くなっています。ちなみに、北向きでは34%効率が落ちることになります。


既設旧凝集池上のソーラーパネル

 国土の狭い日本では太陽光を含め風力、地熱、バイオマスなど自然エネルギーが持つ潜在能力にも限界がありそうです。
 従来の化石燃料に依存する火力発電は液化天然ガス(LNG)や石炭などの資源価格上昇が課題です。
 原子力発電は安全性を考えると地震国日本では現時点で評価が低いと考えられます。
 名古屋市上下水道局の電力使用量は、一般家庭の約7万軒分と多くの電力を使用しており、今後、さらに一層省エネ・創エネに取り組むことが求められています。

 

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