乾坤院の卓杖泉

乾坤院全景
卓杖泉

 愛知県知多郡東浦町緒川に宇宙山乾坤院というお寺があります。室町時代中期(1475年)、緒川城初代城主水野貞守によって水野家の菩提寺として建立された寺です。緒川城から見て乾(いぬい・西北)と坤(ひつじさる・南西)の中間の方向、つまり西の方向にあたる場所に建てられたため、この名前がつきました。
 このお寺は、山中にあるため水に乏しく、遠くまで水汲みにいかなければなりませんでした。ある日住職の宗順禅師が境内を歩いていて西に山が迫っている崖の下にきたとき、ふと立ち止まり、持っていたしゃく杖をそこに立てました。しゃく杖とは、頭部に鉄の小さな輸がいくつかついており、僧侶や修験者が持って歩く杖です。

 そして、このしゃく杖を立てたところを掘らせました。すると、美しい水がこんこんと湧き出て、たちまち大きな泉となりました。
 この水は、お寺の仏前へ供える水として使われるようになり、「卓杖泉」と名付けられ、人々にたいへん喜ばれました。
 このように、杖をついたら水が出たという伝承は、弘法大師の伝説など、全国にたくさん伝えられています。いずれも水がいかに貴重であったかを伝える話です。 現在この卓杖泉は、寺の放生池の片隅にあり、石の枠で囲われ、碑が立っています。
 乾坤院を訪れてみると、思っていた以上に境内の広さと立派さに驚かされました。

山門
本堂

 卓杖泉を眺めながら池に架かった橋を渡ると、立派な二層造りの総門があります。くぐると正面に本堂、左右に同じ造作の建物がとり囲んでいました。そこには禅宗の寺らしい厳粛な雰囲気が漂っていました。
 徳川家康の生母、於大の方は、緒川城主4代水野忠正の娘で、緒川城で産まれたといわれています。そのため、この寺は尾張徳川家の庇護を受け、大切にされてきたようです。
 乾坤院の隣に「於大公園」という、芝生と池と緑の木々に囲まれた大きな公園がありました。散歩していた人に話を聞きました。ここは昔、雑木林の谷だったが、東浦町が整備して、於大の方を記念した公園にしたそうです。

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住所:愛知県知多郡美東浦町
        大字緒川字沙弥田4

乾坤院への地図

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於大公園
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